お客様より桜に関するレポート便り
日本人にとって、桜とは大変なじみが深く、もっとも身近な存在となっています。農耕民族である私達は、山桜が咲くのもを目安に農業に着手します。なぜなら季節はカレンダー通りには行かないからです。春の暖かさを農業の始まりをもっと的確に伝えてくれるのが、山桜なのです。昔からのことわざに『山桜が咲いたら田植えをしなさい』と言われております。確かに桜前線は南からやってきて北に向かっていきます。田植えも同じような時期に同じように言われています。三千年も続いてきたすばらしい行為なのです。そして、農業の始まりはお花見と言うすばらしい出来事を与えてくれているもの、農耕民族だからこそ味わえる行為なのです。
また、桜という字は、旧字では木へんに貝がふたつ。そして女という字がつきます。木へんは過去・現在・未来を現し、または祖先・親・子供を現します。貝は財を現します。しかもふたつもあるわけですから大変な財だと思います。女は子孫繁栄を現します。もっとも豊かなヤマトを現す文字ではないでしょうか。桜の特徴をここで少し述べてみたいと思います。
桜という木は一本では実をつけません。必ず二本ないと子孫を繁栄できません。なぜこのように進化したのか。それはより強い遺伝子を未来に継承するためです。ある病気に強いめしべと、もうひとつ他の病気に強いおしべが交配することにより、両方の病気に強い遺伝子が作られてきたのです。そして、春の野山をあの美しいピンク色で覆いつくしてきたのです。
最近は、ソメイヨシノが主流となり、あちこちに植えられるようになりました。しかしこの桜には、寿命というひとつの欠点があったのです。確かに60年を過ぎてくると、非常に腐りやすく脆いものとなります。しかし、山桜は100年を過ぎても堂々とその姿を現しております。
最近、新種の桜も大変増えております。科学が進み、バイオテクノロジーでそれは簡単に作られるようになりました。確かに見た目は大変美しいのですが、自然の中で人間の手を借りず何千年もの間、咲き誇ってきた天然の桜たちにとって全くの影響が無いとはいえません。なぜなら、先ほど述べたような桜の特徴があるからです。そのことを踏まえた上で、桜を植樹していくことは非常に困難さを招きますが、逆に、より強い自然交配も行われるかもしれないのです。ソメイヨシノの欠点さを補えば、それは逆にすばらしい行為となるかもしれません。
春の野山を、そして、学校・公園・路側などあれほどまでに見事に彩ってくれる植物は桜しかないのかもしれません。ですから、そのような考え方で彩を添えていただくことは大変すばらしい行為だと思われます。