
白翁
月と桜と島ん婆(しまんば)と (10話シリーズ)
第1話 旧暦3月新月の夜、真っ暗闇の中!
次元を超えて、月読神社の山の上から降り立つ!一気に石段を駆け下りて来る!真っ白なバサバサ髪を振り乱し、真っ黒な古びた広い麻布を体に巻き付けている!くるりと南の方向へ一気に!まるで空を飛ぶように走る!暗闇の中、その眼からは渦巻く光線があたりをなぐり照らす!すぐに沼津にある1本の山桜の前にハタと立ち止まる。いきなり大木に顔ごとぶつけるように耳をひたと押し当てる!「オオーッ!聞こえるぞ!感じるぞ!もっと、もっと!もっと!登れ、登れ、力の限り 登れ!」「大地の魂の水の流れよ!、上れ!上れ!もっと上れ!」こだまのようにその声は波動となって広がりを増す。山桜の大木ははその音霊に応えるように、大地の水を小枝の端ばしまでみなぎらせてゆく。「これで島中の山桜に水がゆく。」
半月後 満月の夜
山桜の大木は静かに、まっ白な花びらを目覚めさせ始める。
月明かりに応えるようにやがて、白い大きな傘のような花が開き始める。
「白翁(はくおう)」壱岐先人たちの命名の島桜
なおみ蓮華